「お前って、明るいよな」
そう言われるのが、昔から当たり前だった。
小学校でも中学でも、大学でも。
いつも人を笑わせてた。
ボケて、いじられて、盛り上げて。
ムードメーカーってやつだった。
でも実際は、ずっと“無理してた”。
ほんとの俺は、そんなに明るくない。
静かな場所が好きで、誰かとずっと一緒にいると疲れてしまうタイプ。
でもそれを見せると「キャラじゃない」と思われそうで、ずっと仮面をかぶってきた。
社会人になってからもそれは変わらなかった。
営業職。明るさと愛嬌と根性でなんとかなる、そう思ってた。
でも、ある日、ふっと、なにもできなくなった。
朝起きても身体が動かない。
職場に行っても、言葉が出ない。
相手の顔色をうかがうだけで、気力が全部もっていかれる。
なんでこんなにしんどいのか、最初はわからなかった。
ただただ、「自分の努力が足りないんだ」って自分を責めた。
気づいたら、うつ病と診断されていた。
そこから5年くらい、長いトンネルに入った。
“笑わせる”ってことが、できなくなった。
言葉も、表情も、ぜんぶ固まってた。
誰かと会うのが怖くなった。
なのに、家族がいる。
「頑張らなきゃ」が消えなかった。
だけど、少しずつ、自分に問いかけるようになった。
本当の自分ってなんだ?
誰のために無理してた?
誰の期待に応えようとしてた?
習慣が、少しずつ救ってくれた。
本を読んだ。
日記を書いた。
食事を整えた。
感情を見つめた。
そして、また少しずつ言葉が出てきた。
“演じること”は、まだ完全にはやめられない。
でも、それでいいと思ってる。
人間って、何かしら演じて生きてるもんだ。
ただ、いまは
「俺は無理してた」って言える自分がいる。
これだけでも、俺にとっては大きな一歩だ。